2019年の秋、ITストラテジストに何とか合格しましたが、勉強をする中で一番困ったのが午後Ⅱ問題の解答例でした。
WEB検索してもなかなか模範解答がアップされていなかったので、現在学習している方やこれから学習する方にとって参考になればと考え、解答例をアップしたいと思います。 勉強のお役に立てば幸いです。
論文のポイント
まず解答例の前に、午後Ⅱ論文の3つのポイントをまとめました。
改めて見てみると、実際のIT化提案も同じことが言えますね。
重要なのは、企業ごとの実態把握と経営戦略との整合性、そしてKGI、KPIを達成させるための論理的な仕組み設計だということです。
試験当日はこれから紹介する解答例をもとに、当日の問題本文の題意に合わせてアレンジしました。 ちなみにこの解答例はITEC通信講座で採点してもらったところ100点満点中94点でした。予想外に良い点数をいただきましたが、全体的に少し具体性を欠いたかなと考えています。
問題文
「大規模データの利活用による顧客満足度の向上について」
最近、様々な大規模データを収集・蓄積し、活用する企業や組織が増えている。特に、顧客や製品・サービスに関する大規模データを利活用して、顧客満足の向上に結び付けていく事例が多く見られる。データの利活用を顧客満足度の向上に結び付けていくために、ITストラテジストは、大規模データを利活用する体制や仕組みを確立したうえで、収集・蓄積すべきデータ、分析や活用の方法を明確にして、組織での業務に定着させていく必要がある。
大規模データの分析・利活用を様々な組織で実施する場合、似たような分析や処理を複数の組織で実施してしまい、作業の無駄や情報の食い違いによる混乱を招く恐れがある。したがって、どのような分析をどの組織で実施し、その結果をどのように共有し活用していくか体系的に整理し、利活用を有効なものとすることが重要である。
また、大規模データの利活用が一過性のものとなり定着せず廃れていくリスクについても配慮しなければならない。大規模データの分析の結果、どのような施策に結び付けて顧客満足度の向上に至ったのかを継続的にレビューし、有効な利活用の方法を評価し模索していく活動も重要なものとなる。
あなたの経験と考えに基づいて、設問ア~ウにしたがって論述せよ。
設問ア
あなたが携わった大規模データ利活用の概要と、その結果得られた顧客満足度の向上の概略について800字以内で述べよ。
設問イ
設問アで述べた大規模データの利活用において、あなたは顧客満足度の向上のために、どのような大規模データを収集・蓄積し、どのように分析・利活用しようと考えたか。工夫した点とともに、800字以上1,600字以内で具体的に述べよ。
設問ウ
大規模データの利活用が一過性のものとなって定着せずに廃れていくリスクについて、どのように配慮したか。600字以上1,200字以内で具体的に述べよ。
解答論文
システム名称【画像データのAI解析による顧客満足度システムの開発】
第1章 大規模データ利活用による顧客満足度向上の概要
1-1 大規模データ利活用の概要 A社は地方で総合レジャー施設を運営している企業である。かつては地域の小学生の遠足や社員旅行先として人気があったが、少子高齢化や他レジャー施設のオープンなどの影響で来場者数は減り続け、業績が悪化している。 A社の情報部門のITストラテジストである私は、会社方針として業績を改善させるために、来場者数を増加させることを命じられた。そこで、現在の来場者数減少の原因を把握するため来場者アンケートを行ったところ、季節イベントなどに合わせて期間限定で行っているキャンペーンに魅力を感じない、という回答が多く、顧客満足度が低い状態であることが分かった。この結果をもとに私は、施設内に設置したカメラから来場者の顔の画像データを収集してAI解析を使って分析し、キャンペーンの新規取組みや改善に活用して顧客満足度を高める施策を考えた。
1-2 得られた顧客満足度向上の概略 この施策を行った結果、これまでより来場者数が楽しめるキャンペーンをタイムリに届けることが可能になった。そのため、キャンペーンを目的に来場する人が増加したり、1回の来場当たりの平均滞在時間が3時間から5時間に増加したりする、といった効果が見られた。さらに、家族や友人からのクチコミで来場したという人が増加していることから、顧客満足度が向上したと考えている。
第2章 収集・蓄積した大規模データの内容と分析・利活用の方法
2-1 収集・蓄積した大規模データの内容 私は、データの収集に取り掛かる前に、データを利活用する体制や仕組みを確立しようと考えた。具体的には、データ分析を得意とする人材を集め、専門チームを立ち上げた。分析するチームを明確にすることで、業務の重複によるムダを防ぐことに繋がるからだ。その上で、施設内にWi-Fiの無線回線を利用したネットワークカメラを取り付け、来場者の顔の画像データを収集し、AI解析して属性データに分けデータベースに蓄積した。このとき私が工夫した点は、カメラを入り口の一ヵ所だけではなく、プールやゴルフ場、レストランなどの施設内の各エリアに複数台設置したことだ。なぜならば、エリアごとに来場者の満足度を捉えることが出来れば、より的確なキャンペーンを行えると考えたからだ。しかし、複数台のカメラ設置は初期投資額が増加し、投資回収期間が長期化するというデメリットがあった。そこで私は、AI解析についてはクラウドサービスを利用することにした。具体的には、AIや機械学習の機能がPaaSとして用意されており、低額の初期投資で月額利用できるものである。利用前に、教師データとして一定数の来場者の顔の画像データと属性データを紐付けたものをクラウドサービスに提供した。
2-2 大規模データ分析・利活用の方法 私は、得られた画像データのAI解析を行う際、年齢や性別などのデモグラフィック属性だけではなく、感情などのサイコグラフィック属性もデータ化し、分析対象として蓄積した。なぜならば、リアルタイムに来場者の感情を捉えられれば、キャンペーン効果をすぐに測ることが出来ると考えたからだ。これまでの来場者数カウントやアンケートによる分析は、一定期間ごとにバッチ処理的に行っていたが、今後はリアルタイムに顧客満足度を把握できるため、タイムリにキャンペーン提案に活かせると考えた。 データ分析は専門チームが行って、各エリアで比較できるよう一覧表にまとめ、閉園後に配信することにした。配信された分析結果を参考に各エリアでキャンペーン内容を検討し、新規取組みや既存取組みの修正・改善を行っていく体制として整理した。
第3章 定着せず廃れていくリスクへの配慮
3-1 顧客満足度向上への継続的レビュー 私は、大規模データの利活用が組織的な取組みとして定着するよう、エリアごとに取組んだキャンペーンと顧客満足度の結果について継続的なレビューを行った。さらに、定期的に顧客満足度の分析結果と会社業績との相関関係を経営層に報告した。なぜならば、大規模データの利活用による業績への貢献を定量的に可視化することで、継続的な取組みとして組織に定着すると考えたからである。施策への取組み以降、施設全体として顧客満足度は向上しており、来場者数は増加に転じていた。その結果、売上げが前年に比べて20%増加し、営業利益は30%増加した。この結果には経営層も一定の貢献を評価し、今後も全社として継続的に取組んでいくよう指示をいただいた。
3-2 より有効な利活用の検討 顧客満足度がタイムリに把握できるようになったことは、効果的なキャンペーン施策をすぐに実施できるだけではなく、各エリアのスタッフの士気を高める効果もあった。各エリアで比較できる一覧表にしたことで、エリア同士の競争意識が生まれ、これまで以上にキャンペーン施策に工夫を凝らして継続的に改善していく姿勢が見られるようになった。一方で、キャンペーン施策以外のいわゆる定番の遊具や設備の改善については、スタッフの意識があまり向いておらず改善の余地がある。今後は、キャンペーンなどの一過性の施策のみではなく定番にまで広げ、さらなる顧客満足度の向上に取組んでいこうと考えている。
以上
まとめ
第1章は具体性に欠け、文字数が少し足りない、とITECから指摘いただきました。 第2章、第3章が良くかけていたのが高得点の要因だったようです。 ちなみにこの論文を書いた後、9月下旬にITEC模試を受けましたが結果はD判定。 午後Ⅱ試験も落第点でした。
努力すれば必ず良い結果が返ってきます。 最後まで頑張ってくださいね!