【2019年事例Ⅳ】 中小企業診断士二次試験

前回に引き続き、令和元年度の中小企業診断士 二次試験の解答です。

いよいよラストの事例Ⅳです。

診断士の二次試験を合格するための一番重要な事例といっても過言ではありません。

これまでと同様、私の「解答」と「TACの模範解答」を比較し、感想を書いていく形にしています。

試験問題はこちらから(協会HP)

(前回までの記事もご参考ください。
事例Ⅰはこちら。事例Ⅱはこちら。事例Ⅲはこちら。)

第1問(配点25点)

(設問 1 )
D社の前期および当期の連結財務諸表を用いて比率分析を行い、前期と比較した場合のD社の財務指標のうち、①悪化していると思われるものを2つ、②改善していると思われるものを1つ取り上げ、それぞれについて、名称を⒜欄に、当期の連結財務諸表をもとに計算した財務指標の値を⒝欄に記入せよ。なお、⒝欄の値については、小数点第3位を四捨五入し、カッコ内に単位を明記すること。

■解答
①(a)売上高営業利益率 (b)0.98%、(a)流動比率 (b)88.65%
②(a)有形固定資産回転率 (b)1.64回

■TACの模範解答
①(a)売上高総利益率 (b)16.76%、(a)当座比率 (b)41.27%
②(a)有形固定資産回転率 (b)1.64回

■感想
まずはお決まりの経営分析の問題です。
設問文に経営分析ではなく「比率分析」という言葉を使っている点が少し気になりますが、それ以上に皆さんを悩ませた問題があったのではないでしょうか。

そうです、改善している点が見つからない。

本文の内容からは、「建材の価格高騰」「コストの増大」という点から収益性の悪化、「非効率な…在庫保有」という点から効率性の悪化が読み取れます。

収益性の確認で損益計算書を見てみると、売上高が伸びているのに売上総利益が下がっているので、「建材の価格高騰」の影響を大きく受けていそうです。
さらに売上高販管費比率を確認すると、15.69%⇒15.78%に増えているので、1つ目は「コストの増大」も含む①(a)売上高営業利益率になるかなと考えました。

次に効率性の確認で貸借対照表を見ると、棚卸資産が約1.5倍に増えており棚卸資産回転率は4.74回⇒3.13回に悪化しています。

で、あとは安全性で改善している点を探そうと考えたのですが、短期安全性・長期安全性・資本調達構造のどれを確認しても改善点が見当たりません。
むしろ流動負債が増えている点は、悪化している点としての優先順位が高そうです。

そこで、もう一度本文に戻って改善している点を探すことにしました。

ヒントになったのはメインの建材事業部(第2問を参照しました)で、「受注が増加している」こと。
売上高の増加が改善点として挙げられそうです。

一方で、本文には大きな設備投資などは書かれていませんし、財務諸表からも設備投資は読み取れません。
つまり、前期と同じ設備で売上を伸ばしたという点で②(a)有形固定資産回転率を指摘できそうです。

最後に、悪化している点として安全性のどこを指摘するかを考えました。

流動負債が増えているのは短期的に危険な状態です。
当座比率の41.27%もかなり危険な状態ですが、流動比率が100%以下ということは仮に棚卸資産が全て売れても流動負債が返済できないということです。

流動負債多すぎでは?という点から①(a)流動比率にしました。

(設問 2 )
D社の当期の財政状態および経営成績について、前期と比較した場合の特徴を50字以内で述べよ。

■解答
住宅着工戸数増加で売上高が伸び効率性は改善したが、建材価格高騰や在庫増により収益性、安全性が悪化した。

■TACの模範解答
受注増加により投資効率が改善しているが建材の価格高騰等と在庫の停滞により収益性と安全性が悪化している。

■感想
私の解答とTACの解答で近い内容になっています。

(設問1)で挙げている財務指標は少し異なりますが、着目した点は同じだったようです。

第2問(配点25点)

(設問 1 )
事業部および全社(連結ベース)レベルの変動費率を計算せよ。なお、%表示で小数点第3位を四捨五入すること。

■解答
建材事業部 95.33%
マーケット事業部 69.39%
不動産事業部 3.52%
全社 89.09%

■TACの模範解答
建材事業部 95.33%
マーケット事業部 69.39%
不動産事業部 3.52%
全社 89.09%

■感想
ここはかなり基本的な問題でしたね。

ケアレスミスだけ注意が必要です。

(設問 2 )
当期実績を前提とした全社的な損益分岐点売上高を⒜欄に計算せよ。なお、(設問1)の解答を利用して経常利益段階の損益分岐点売上高を計算し、百万円未満を四捨五入すること。
また、このような損益分岐点分析の結果を利益計画の資料として使うことには、重大な問題がある。その問題について⒝欄に30字以内で説明せよ。

■解答
(a)4,345百万円
(b)事業部ごとに売上高に対する利益構造に大きな差があるため。

■TACの模範解答
(a)4,345百万円
(b)異なる費用構造についての考慮が不十分であり、分析精度が低い点。

■感想
(a)損益分岐点売上高については、こちらも基本的な問題です。
固定費÷限界利益率ですね。

(b)問題点は、事業部ごとの変動費率の差が大きい点を挙げました。
どの事業部で売上を伸ばすのか次第で利益率が大きく変わってくるので、全社合計の損益分岐点分析だけでは不十分だと考えました。

TACの解答も同じ内容と考えて良いのでしょうか。
「異なる費用構造」というのが何を指しているのか不明確ですが、恐らく事業部ごとに異なるということを言っているのだと考えられます。

(設問 3 )
次期に目標としている全社的な経常利益は250百万円である。不動産事業部の損益は不変で、マーケット事業部の売上高が10%増加し、建材事業部の売上高が不変であることが見込まれている。この場合、建材事業部の変動費率が何%であれば、目標利益が達成できるか、⒜欄に答えよ。⒝欄には計算過程を示すこと。なお、(設問1)の解答を利用し、最終的な解答において%表示で小数点第3位を四捨五入すること。

■解答
(a)91.49%
(b)
マーケット事業部の売上高10%増加で、合計売上高が4994+(196×0.1)=5013.6となる。
よって合計の変動費は5013.6-474-250=4289.6が目標となる。
このことから、建材事業部の目標変動費は4289.6-10-(136×1.1)=4130となり、売上が不変なので目標変動費率は4130/4514=0.914931…≒91.49%

■TACの模範解答
(a)91.49%
(b)
●売上高 4514+196×1.1+284=5013.6
●変動費(建材事業部の変動費率をαと置く) 4514α+196×1.1×69.39%+10=4514α+159.60484
●建材事業部の変動費率 5013.6-(4514α+159.60484)-474=250 α=0.91493…≒91.49% 

■感想
マーケット事業部の売上10%増と目標利益額250万円の条件が付いた、少し複雑な問題でした。
でも、落ち着いて取り掛かれば解ける問題ですね。

私は
①全社的な売上高⇒②全社的な変動費⇒③建材事業部の変動費⇒④建材事業部の変動費率
の順番で考えました。

TACの解答は式が複雑ですが、内容としては近いですね。

第3問(配点30点)

(設問 1 )
各期のキャッシュフローを計算せよ。

■解答
第1期 △20.9 第2期 6.1 第3期 14.5 第4期 9.6 第5期 9.6

■TACの模範解答
第1期 △0.9 第2期 6.1 第3期 14.5 第4期 9.6 第5期 9.6

■感想
第1期のキャッシュフローがずれました。

私はフリーキャッシュフローと捉えて第1期は投資CFを含めた△20.9にしましたが、見直した時に自分の誤りに気が付きました。

投資CFは第1期が始まる前に行われるので第1期のCFには含まれませんね。
含んでしまうと、第1期のCFとして資本コストで割り引かなければならなくなってしまいます。

ここはTACの解答が正しいです。

(設問 2 )
当該プロジェクトについて、⒜回収期間と⒝正味現在価値を計算せよ。なお、資本コストは5%であり、利子率5%のときの現価係数は以下のとおりである。解答は小数点第3位を四捨五入すること。

■解答
(a)3.35年
(b)12.63百万円

■TACの模範解答
(a)3.03年
(b)12.63百万円

■感想
(b)正味現在価値は合ったのに、なぜか(a)回収期間がずれてしまいました。

確認してみると、私の解答はCFを割引して回収期間を求めているのに対し、TACの解答はCFを割引しないで求めています。

設問文は「回収期間法」ではなく、「回収期間」となっているので割引すべきでは?と考えましたが採点はどうなるでしょうか。

(設問 3 )
<資料>記載の機械設備に替えて、高性能な機械設備の導入により原材料費および労務費が削減されることによって新製品の収益性を向上させることができる。高性能な機械設備の取得原価は30百万円であり、定額法によって減価償却する(耐用年数5年、残存価値なし)。このとき、これによって原材料費と労務費の合計が何%削減される場合に、高性能の機械設備の導入が<資料>記載の機械設備より有利になるか、⒜欄に答えよ。⒝欄には計算過程を示すこと。なお、資本コストは5%であり、利子率5%のときの現価係数は(設問2)記載のとおりである。解答は、%表示で小数点第3位を四捨五入すること。

■解答
(a)11.57%
(b)
投資額の差は30百万円-20百万円=10百万円
各期の減価償却費の差は6百万円-4百万円=2百万円
原材料費と労務費の削減率をxとすると
(16x-2)×(1-0.3)×0.952+(17x-2)×(1-0.3)×0.907+(32x-2)×(1-0.3)×0.864+(25x-2)×(1-0.3)×0.823+(16x-2)×(1-0.3)×0.784-10>0になれば良い。
計算すると、66.9926x+2.598-10>0
x>0.115669… 11.57%

■TACの模範解答
(a)10.52%
(b)
●減価償却費の差額 (30÷5)-4=2
●税引後CFの差額(原材料費と労務費の削減割合をxとする)
第1期:16x×(1-0.3)+2×0.3=11.2x+6
第2期:27x×(1-0.3)+2×0.3=18.9x+6
第3期:32x×(1-0.3)+2×0.3=22.4x+6
第4期:25x×(1-0.3)+2×0.3=17.5x+6
第5期:16x×(1-0.3)+2×0.3=11.2x+6
●原材料費と労務費の削減率
(11.2x+0.6)×0.952+(18.9x+0.6)×0.907+(22.4x+0.6)×0.864+(17.5x+0.6)×0.823+(11.2x+0.6)×0.784>10
x>0.10522…→x≒10.52%

■感想
(a)の解答がずれているのは私のケアレスミスです。

第2期の原材料費15+労務費12=27のところを17として計算してしまいました。
小学1年生でも分かる足し算を間違えるとはなんとも情けない…

そこを間違えなければ正解できる問題でした。

ポイントは差分CFから計算するという点ですね。

収入ー支出の点では、原材料費と労務費の削減額が経済的な効果となります。
一方、投資額は10百万円の差となり、各期の減価償却費も変わってきます。
これらを整理してNPVがプラスになるように式を組み立てていけば、削減率が見えてきそうです。

解答に時間がかかる上、正答率が高い問題ではないので一番後回しにするタイプの問題ですね。

第4問(配点20点)

(設問 1 )
D社は建材事業部の配送業務を分離し連結子会社としている。その⒜メリットと⒝デメリットを、それぞれ30字以内で説明せよ。

■解答
(a)権限委譲による管理コストの削減や、利益責任が明確になること。
(b)統制が困難になる事で本社のブランドを棄損する信用リスクがある。

■TACの模範解答
(a)配送事業に対する投資のポジションとその成果を明確にできる点。
(b)事務処理や会社管理などにかかるコストの負担が増加する点。

■感想
この第4問は、あまり時間がかからない割に配点が20点もあるので、確実に解答したい設問です。

メリットは、分社化して連結子会社にした際の権限委譲を軸に解答しました。
権限委譲することで、経営面では本社の手から離れるため管理コストが削減されます。
また、会社になることで利益責任は明確になりますよね。

一方、デメリットは自由だからこそ管理が行き届かなくなる点を挙げています。
昨今のガバナンス不足による子会社の不祥事のニュースを思い浮かべて、この解答にしました。

TACの解答は事例に合わせてメリット、デメリットを上手く指摘していますね。

(設問 2 )
建材事業部では、EDIの導入を検討している。どのような財務的効果が期待できるか。60字以内で説明せよ。

■解答
EDI化により①建材調達の効率化、②在庫の適正化が実現し、収益性や効率性の改善効果が期待できる。

■TACの模範解答
タイムリーな配送によるコストの削減と恒常的な在庫の減少に伴う運転資本の低減および在庫に投下された資金の回収が期待される。

■感想
ここは本文の「恒常的な収益性の低下」の部分を改善できる点を考えました。

「非効率な建材調達・在庫保有」が解決できると大きな効果になりそうです。

TACの解答で挙げている配送コストの削減は私も考えましたが、本文を確認すると「配送コストの増大」の原因が「建材配送の小口化」となっているので、EDI化で解決できることではないと考え解答には入れませんでした。

ですが、TACの解答を読むと入れても良かったかもしれません。
タイムリーな配送という表現は上手いですね。

全体の感想

やはり事例Ⅳは時間との戦いですね。

この事例も最後は時間に追われてしまいました。
特に、第1問の経営分析と、第3問の投資の経済性計算に時間を取られました。

診断士登録してからは、投資の経済性計算はあまり使うことがなかったので解けるか心配でしたが、案外忘れないものですね。
書きながら少しずつ思い出すことができました。

さて、今回で令和元年度の中小企業診断士 二次試験シリーズは完了となります。

皆さまの勉強のお役に立てたでしょうか?

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受験生、現役診断士どちらも大歓迎です。

一緒にスキルアップしましょう!

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